からくり人形の修理・復元を主な生業とされている、九代玉屋庄兵衛氏をご紹介させていただきます。
玉屋庄兵衛氏は25歳で七代目に弟子入り。昭和44年、皆さんもご存じの「茶運人形」を『機匠図彙』を手本にして、説明と寸分違わない完全復元に成功しました。その後「茶運人形」は日本の江戸からくりの代表として、平成15年に東京上野の国立科学博物館に、平成17年にロンドンの大英博物館に寄贈されました。平成7年に九代玉屋庄兵衛を襲名。各国への日本伝統文化ミッションとしてからくり人形の実演など海外でも活動しておられます。平成8年より、犬山市の犬山市文化史料館の別館「からくり展示館」に工房を開設、毎週金、土曜日にはからくり人形の製作を公開しています。
自動的に動き、定められた役割を果たすという現代におけるロボットに通用する要素を備えたものが4百年も前に実現していたことに驚きます。ぜひ犬山へお越しください。
「からくり展示館」のある犬山は、近年では観光スポットとして注目されています。名古屋からのアクセスも便利、国宝犬山城も是非登ってみてはいかがでしょう。
毎年4月の第1土、日曜日には犬山祭が開催されています。愛知県内にある150以上の山車祭りのひとつです。
山車祭の「山車」は古来、神は天から地上へ降りてくる際、高い山や木などに乗り移ると考えられ、また山自体を神とする考えも全国各所に所在します。山車はこのような聖なる山への信仰心に基づいたものと言われています。
犬山祭は380余年の歴史絵巻、主役は13輌の山車で、三層からなる豪華なもの。そのすべてで、からくり人形の舞を奉納しています。また、山車の豪快な曳きまわしやお囃子方、子供たちの着用する金襦袢など見どころ満載です。
山車からくりの原作者は名古屋の人形師が多く、その中の一人が江戸時代から続く玉屋庄兵衛氏であることは言うまでもありません。九代玉屋庄兵衛氏は、先代からの歴史と伝統文化、技術を受け継ぎ、現在、修行中である十代目に継承すべくこの犬山の地で深く根ざし、活動しています。犬山祭のからくり人形を支える第一人者であり、陰の主役であることを強く感じました。
最後に九代玉屋庄兵衛氏よりひとこと
これまでに25~6の諸外国を訪れましたが、「ものづくり日本」のからくり人形は高く評価されています。刃物などを使い、作るという行為を小学生のうちから経験してもらうことが大事ではないか。切るということを知らないから痛みがわからない子供たちが多くなり、簡単に人を傷つける行為となっているのではないか。もっと道具を使うということを学んでほしいと思います。特に刃物を使ったものづくりを教えた方が良いのではないかと思います。敗戦国の日本が復活し経済大国日本となった基盤は工業製品でありました。今や世界の日本でもあることから若い世代に、ものづくりの原点を学んでもらいたいと感じています。
犬山市文化資料館 別館「からくり展示館」