みなさん、学校は楽しいですか?「やらなくてはいけないことと、やってはいけないことばかり」なのが学校だなあ、と、うんざりしていませんか?
そんな気持ち、わからないわけでもありません。不登校の児童生徒の数は昨年度、全国で小・中学生が約三十万人、高校生が六万人超。やはり行きたくなる場所にしたいですね。
高校は中学校までの基礎の上に、「将来かなえたい目標(やりたい仕事、なりたい自分)」に向かって、進学・就職・起業に役立つ難しい知識や専門的な技能を実践的に学ぶところです。ただ、自分の高校時代を振り返ると、目の前のテスト勉強にばかり追われていたような。
みなさんは、この大事な「将来かなえたい目標(やりたい仕事、なりたい自分)」って、中学卒業までに考える機会、じゅうぶんありましたか?高校生になってからはどうでしょう?
自分を知り将来を考えるキャリア教育。これまでは、名古屋に限らず、近場での職場見学や職業体験のみで地域差があったり、熱心に取り組む学校とそうでない学校の差もあったりして、すべての子どもに学ぶ機会がより良く提供できていなかったと思っています。
そこで名古屋は、それぞれの学校にお任せではなく、市全体としてキャリア教育が充実するようサポートするため、今年度、キャリア教育推進センターを開設。すべての学校でのキャリア教育を支援する体制を整えました。生徒それぞれの個別相談などにも対応できるよう、これまで市立の高校と特別支援学校全校に配置していたキャリアナビゲーター(キャリアコンサルタント資格を有する常勤職員)を中学校にも全校配置という方針で進めています。
姉妹都市のロサンゼルスは、カウンセリングやキャリア教育が充実しているということで、何回か視察団を派遣して学んでいます。一番驚いたことは、ロスの中高校生は受験のための勉強はしていない(ように見えた)ということ。そもそも日本のような高校入試はなく、特に公立高校は学区で決められた所へ進学するシステムのようです。
そういう米国では、家庭でも学校でも、子どもが小さいうちから「何になりたい?」「どんな大人になりたい?」を問いかけ続けているとのこと。中学校では「キャリアラボ」という、さまざまな産業分野に触れる職業体験の授業がおこなわれ、高校では「キャリアテクニカルエデュケーション」という、産業界で求められる最新の知識やスキルを学ぶ高度な授業がおこなわれています。日本の高校では専門学科や総合学科の教育システムに近いのかもしれません。
日本とはそもそもの点でいろいろ異なるなあ、と思いつつ、採り入れられるロスの取組は採り入れようと、キャリア教育推進センターを中心に現在、すべての小中学校、特別支援学校、高校でのキャリア教育を充実するさまざまな体験型学習プログラムを考案中です。名古屋で成功したら愛知県内、さらには全国に発信して拡げたいですね。
もちろん、このようなキャリア教育の取組だけで「学校が楽しくなる」とは思っていません。学校の授業そのものも変わる必要があります。名古屋ではこの秋、「学びのコンパス」という、市内の学校が基本とすべき教育指針をつくりました。その一番の狙いは「子ども中心の学び」に思いきって転換するということです。紙や黒板をベースとした「一斉一律の授業」から、タブレットPCなどをフル活用した「個別最適な学び」へ。
これからも率先して、行きたくなる、楽しく学べる学校づくりに挑戦していきます!
名古屋市教育長 坪田 知広