MRJ – Mitsubishi Regional Jet –

技術と情熱が結集した次世代リージョナルジェット機「MRJ」

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MRJは三菱航空機が手掛けるリージョナルジェット旅客機。
初の国産旅客機であるプロペラ機YS11以来、半世紀ぶりの国産旅客機として注目と期待を集めています。
多数の社内試験を経て今年3月から始まったTC(型式証明)飛行試験は開発の最終段階となるもので、MRJプロジェクトは2020年半ばの初号機納入に向けて山場を迎えています。
今回はMRJを製造している愛知県豊山町で、2017年にオープンしたMRJミュージアムと工場見学のツアーに参加、展示や映像、製造現場の見学を通して『MRJ』を体感してきました。


MRJは、三菱重工業の開発部門が独立して立ち上げられた三菱航空機で手掛けるリージョナルジェット機。
リージョナルの地域という意味が示すように、比較的近い距離で使用されるジェット機です。
航続距離はおよそ3700km、北海道から沖縄までが約3000kmですから国内は全域カバー、中部国際空港を起点とすれば上海やグアム島まで飛行が可能です。

MRJの最たる特徴は一から設計されたこと。すべてにおいて採用された次世代の最先端技術を最適化するために数々の工夫が為されました。
それは革新と挑戦の連続でしたが、MRJはチーム一丸となって様々な課題を克復し、最も効率的で快適かつ信頼性の高い機体となったのです。

Pratt&Whitoney社の最新鋭エンジンであるPW1200Gを搭載、新ギアシステムの採用、Rockwell Collins社の最新鋭フライトデッキProLineFusion搭載などのほか、客席の居住性や快適性の実現…… あらゆる構造、部品、素材が厳選されました。また機体は先進の空力設計技術により燃費向上と騒音低減を果しています。

航空業界では美しい機体は性能が良いと言われていますが、MRJは「世界一美しい機体を造る」を合言葉に造られました。
スリムな胴体の周りは空気がスムーズに流れるため、空気抵抗が少なく低燃費も実現できます。
またMRJのデザインには"日本らしさ"が取り入れられています。
シャープなのに繊細で無駄のない美しい形は日本刀をイメージ、赤・黒・金色のイメージカラーは日本の伝統工芸にある漆塗りの代表色から取り入れたものです。
MRJは、機能美と最新鋭の技術を融合させる、まさにインテグレーション能力が発揮された旅客機と言えるでしょう。


MRJミュージアム・ 工場見学ツアーを終えて

実物の展示や映像、製造現場の見学はワクワクの連続。
映像画面いっぱいに大空を翔るMRJの勇姿に魅せられました。

Q.MRJには多くの海外製品が使われていますが、それはどうしてですか。(中京大学附属中京高等学校/柴田 和琳)

A.MRJを造る上で開発主体はあくまでも日本です。部品や装備品など海外の製品を使っていますが、それは世界的に実績のある企業の最新鋭のものを使うことによって信頼性を高めることにつながっていきます。
日本製にこだわるよりも実績が裏付ける製品のグレードに重きを置いた結果でしょう。
またそれらの製品の良さを最大に生かすには、高度なインテグレーション(統合)能力の高さが不可欠です。
我社はMRJを一から開発設計をし、製品を選び、妥協をせず、数々の擦り合わせをしながらまとめ上げてきたのです。そのノウハウが三菱重工の強みです。

Q.逆に三菱重工から他の航空系企業へも輸出しているものはありますか。(名古屋大学教育学部附属高等学校/鈴木 希授)

A.三菱重工はボーイング777/777X向け後部胴体、ボーイング787向け複合材主翼、ボーイング737MAX向け内側フラップ、エアバスA380向け下部の前後カーゴドアなどを供給しています。

他にも航空機エンジンの分野では、欧米のジェットエンジンメーカーに燃焼器やタービンなどの高温部品を供給したり、機種によっては共同開発に参画しています。

Q.日本の航空機産業は他国から遅れているのでしょうか。(滝高等学校/片山 青葉)

A.確かに、完成機メーカーとしては世界から遅れてきたのが事実です。
大正時代に始まった日本の航空機産業は、当初、軍需のために開発が進みました。
昭和初期には多くの航空機メーカーがあり、技術は著しく発達したのです。
しかし第二次世界大戦敗戦で、日本は航空機の製作・研究などが10年にわたって禁止されました。
企業や技術者たちは自動車など他業種へと転換していったのです。
GHQの占領が終り、1957年には航空機開発が解禁されましたが、世界の需要はジェット機や超音速機などへと転換期を迎えていました。
前後して1950年に勃発した朝鮮戦争で、米軍が戦闘機の部品供給や修理を要請してきたことが、日本の航空機産業復活の契機となりました。
その後、YS11も誕生しましたが、米国の航空機に比べて価格面でも不利なため撤退を余儀なくされ、米国大手メーカーへの部品供給や修理、共同開発の道を歩んだのです。
完成機メーカーとしては世界から遅れをとったものの、航空機製造における集積した技術とノウハウを生かして、この分野での成長は充分期待できると確信しています。

Q.ボンバルディアやエンプラエルといった小型機生産の強豪がいる中で三菱重工が参入したのは何故ですか。(天白高等学校/岩田 浩空)

A.実は大手のボンバルディアやエンブラエルが現在販売している機体は、製品としては20年前の機体です。
従って一から設計開発した最新鋭のリージョナルジェット機を出せば、市場は強く反応すると見込んでいます。
実際に多くの受注が発生しています。

Q.海外のジェット機と比べてMRJが勝るところは何ですか。( N高等学校/神谷 萌南)

A.最新鋭のエンジンを搭載して、その性能を最大限に引き出す設計がMRJには為され圧倒的な燃費性能を実現しています。フライトデッキも最新鋭。
4面の15インチ大型液晶ディスプレイによって飛行状況や地形状況の視認性を高めています。異常を知らせるアラームなども自動的に画面に表示しています。
飛行機を操縦するためには常に様々な注意を払わなければなりません。
大きなディスプレイで必要な情報を瞬時に得ることができるので、パイロットの負担軽減に役立つと考えています。
加えて将来のアップグレードが容易にできる設計が施されています。
機体も安全性、快適性、環境負荷低減などを確保した次世代設計です。
それぞれの機能が最大限に発揮し合える旅客機となっているのです。

Q.YS11機の何が生かされていますか。(天白高等学校/岩田 浩空)

A.YS11機はプロペラ機でしたので、客室内がかなりうるさかったようです。
MRJは居住性を高くするために様々な工夫が施されました。
Pratt&Whitoney社の最新鋭エンジンであるPW1200Gは、低圧タービンを高速回転させて効率を高める一方、ファンを低速回転させることで大幅な騒音低減を実現しました。
また居住性という点では座席幅がリージョナルジェット機の中では最大の広さです。
前の席との空間も広くゆったりと座ることができます。
リクライニングは座面が前に出てくる設計で、背もたれ自体はあまり倒れていなくても深くリクライニングしているように感じるのです。
通常、航空機の貨物室は客室の下にあるスペースを利用しますが、MRJの新設計では貨物室を機体の後方へと移動しました。
これによって新たな空間を生み出し、2m余りという圧迫感の少ない天井高が実現できました。
またMRJの胴体は真円で、中心に座席を配置、直径の一番広いところに肩や肘の位置がくるように設計されており、窓側の席でも肩や肘があたりにくくなっています。

YS11機からの改善点に留まらず、MRJではこの機に搭乗するすべての人に配慮しました。
たとえば収納棚の下にハンドレイルを設置しましたが、機体が突然揺れた時にとっさに掴むことができ、客室乗務員たちの転倒を防止します。
これは実際に働く客室乗務員たちの意見を取り入れて採用した工夫のひとつです。

Q.初納入スケジュールが何度も延期された経緯を教えてください。(天白高等学校/岩田 浩空)

A.MRJは開発から5年後の2008年にプログラム、ANAからの発注を受けてローンチが決まりました。
2014年、飛行試験機の初号機がロールアウト、2015年には初飛行に成功しましたが、納入時期については5回ほどのスケジュール見直しがありました。
最初の根本的な変更は素材の変更でした。
その後はTC(型式証明)を取るのが課題となりました。
三菱重工は戦闘機も造っている企業なので、飛ぶものを造った実績は多数あります。
しかし何故それが安全なのかを証明することが非常に難しいのです。
そこで、ある時から海外のグローバルエキスパートに入ってもらい、力を借りて進めてきました。
今年の3月からTC飛行試験が始まっており12月まで続きます。
これで本当に大詰めの段階になりました。
初号機の納入は2020年半ばを予定しています。
私たちの夢を乗せて大空を翔るまであと少し… ご期待ください。


前列左より
岩田 浩空 天白高校3年
片山 青葉 滝高校2年
佐藤 邦南 名城大学附属高校3年
柴田 和琳 中京大学附属中京高校1年
後列左より
木全 佐介 名城大学附属高校2年
神谷 萌南 N高校3年
久保 遥奈 愛知高校2年
鈴木 希授 名古屋大学教育学部附属高校2年

左側
アテンダント:
青山 結香さん
三菱重工業 株式会社 広報部MRJプロジェクト:小野 玄起さん

右側
情報誌スキッフル 代表 吉田雅司


柴田 和琳 中京大学附属中京高校1年
私は今回初めてMRJミュージアムに見学に行かせていただきました。普段行くことの出来ない場所で、普段当たり前のように乗っている飛行機について、50年越しの国産飛行機についてなど歴史とともに学ぶことが出来、ただ乗っているだけでは気づかない工夫や、仕組みを知ることができました。今回の見学で学んだことをこれからの活動などに活かして行きたいと思います。

神谷 萌南 N高校3年
MRJはMitsubishi Regional Jetの略で、その言葉通り、Reagional、ある一定の範囲しか飛びません。座席も100席以下で普通の旅客機と比べて少ないです。

 しかし、ミュージアムを見学すると、MRJの特徴がたくさんあり驚きました。例えば、防音、そして環境に優しいところです。MRJは本来の旅客機より60%も騒音が低減されます。さらに、燃料も40%抑え、環境への配慮もされています。

 このような点から今の時代に適した飛行機がMRJだなと思いました。ただ顧客を増やすために価格で勝負するのではなく、未来の環境まで考えてより高い技術を目指しているところが素晴らしいなと思いました。ミュージアムを見学してこれからの技術やテクノロジーの可能性も実感しました。ミュージアムでは機体の説明を聞きましたが、難しいことがいっぱいでした。しかし、その複雑そうに見える技術がたくさんのことを可能にしているのだと考えると私たちが勉強する価値は大きいと感じました。未来にはどんな新しい技術やものが生まれるのだろうと考えると希望が湧きました。

 もう一つ、MRJのすごいと思ったところはグローバル化の中で世界の力を借りつつ日本の個性を失わないところです。30%近くの海外社員がMRJの開発・製造に携わっているそうです。ですが、日本の特徴が多く残っています。デザインを例に挙げましょう。機体の外部には日本刀や歌舞伎に関わるデザインが施されています。また機内にはライトで桜をイメージしたり、快適なシートを設置し、日本らしい細やかな工夫がみられます。

MRJの見学は私にとってものすごく貴重な体験でした。ものづくりの素晴らしさをこの目で実際に見れてとても満足できたし、未来に希望が見えました。MRJはこれからどう進化していくんだろう、また、世界はどう発展していくのだろう、そう考えるととてもワクワクしました。

佐藤 邦南 名城大学附属高校3年
「鉄の塊が空を飛ぶ」とても夢があってしかし理屈のわからないナゾを、丁寧に解説してもらえて少しだけ理解ができました。
素敵だけれど実情を知らないことが世にはたくさんある、と再三思い知らされるツアーでした。
私自身飛行機などといった乗り物に興味はなかったのですが、それでも聞いていて飽きない説明と充実した内容だったと思います。
いつか飛行機に乗るときにこの日の経験を思い出すでしょう。

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