「高校生は『大人』か否か?」私が高校生の頃に、クラスで行った討論のテーマです。
詳しい議論の内容は忘れてしまいましたが、私自身は「大人だ」と主張したことを覚えています。
「高校生にもなれば知識も増え、大人の視点になりきって考えてみることもできるはず。」今思えば怖いもの知らずの発想で少し気恥ずかしいですが、このように考えていたように記憶しています。
そもそも「大人」とは何か?という問いに明快に答えることは容易ではありませんが、高校生当時の私と皆さんでは置かれている状況が明確に違います。ご存知のとおり、先般の法改正により選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、高校生のうちに有権者となり選挙で投票を行えるようになる人が出てきています。このことはある意味、高校生が名実ともに社会の側から「大人扱い」されるようになった、と見ることもできるのではないでしょうか。
実は、米国、英国、フランス、ドイツといった先進国を含めた世界のかなりの数の国が選挙権年齢を18歳以上としています。今や、若い世代の存在感を誰も無視することはできず、若い世代が政治ー私なりに定義すれば、「みんなに関わること」を決定する過程ーに参加することを促し、その意見を反映させていくことが期待されているのだと思います。例えば、21世紀は「情報化社会」だと言われることがありますが、この情報化社会に今最もうまく適応し、新しい価値を創造する可能性を秘めているのは皆さんの世代に他ならない、と感じている人は多いはずです。
政治に若い世代の意見を反映させていくための環境が整ったことを受けて、今後皆さんには、性別、年齢、職業など、異なる様々な背景を持ち、多様な意見を持つ人々からなる社会の中で、自らの考えを根拠とともに説明できたり、物事を多面的・多角的に考え、公正な判断を下したり、他者の考えを受け入れ、意見を交換したりすることが一層、求められることになります。
これらは、皆さんがこれまでの学校生活をはじめ様々な仕方で既に獲得してきたスキルだと思いますが、文科省では、皆さんがより自信をもって「大人」の一員たる有権者として行動できるよう、政治や選挙に関する高校生向け副教材の作成・配布、活用を促すなどの取組を行ってきたところです。ぜひ皆さんがこれからも、政治的な教養を幅広く身につけ、よりよい社会の実現のために、積極的に政治に参加していただくことを、切に願っています。
※個人としての見解です。
文部科学省大臣官房政策課評価室
海老 洋太
大学院を修了後、文部科学省に就職(今年で3年目)。
東京都出身の26歳。
初等中等教育局児童生徒課に所属時、選挙権年齢の引下げへの対応に係る業務に携わる。