STATION Ai

見つける、叶える、未来への挑戦

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国内最大のスタートアップ支援拠点・STATION Ai
スタートアップの創出や育成、オープンイノベーションの推進を目的として様々な支援サービスが提供されている施設ですが、既存の概念とは異なる展開に興味を覚え、より具体的な内容が知りたくなって訪ねてみました。


Interviewer

《Edu Beyond Japan》
戸田 和聞 名古屋大学教育学部3年
原 菜々世 名古屋大学教育学部3年
井上 咲春 名古屋大学教育学部1年
《どえりゃあWings》
山田 朱莉 名古屋市立向陽高等学校2年
羅星 梓 名古屋市立向陽高等学校2年

お答えくださったのは
愛知県経済産業局 顧問
名古屋大学ディープテック・シリアルイノベーションセンター 客員教授
名古屋工業大学 客員教授
愛知大学 特別客員教授
柴山 政明 さん


柴山 スタートアップ支援やイノベーション創出に向けた取組、その発端は2018年のこと。Aichi-Startup戦略を考案、そこでスタートアップ・エコシステムを作ろうということになりました。エコシステムとは、地域で取組が自立的に展開できるようにする社会システムです。事業会社(企業)、行政、大学が一体となり、役割分担して事業を起こすという発想です。その拠点となるのがSTATION Aiで、2024年10月にグランドオープンしました。愛知県が中心となって稼働していますが、今は多様な連携で動いています。

現在、愛知県の人口は全国で4位(2025年時 716~745万人)、GDPは2位です。愛知県はモノづくり企業の集積地。このプロジェクトを始めた大きな背景に、リニア中央新幹線の開通があります。名古屋、東京間が約40分で結ばれることになります。産業都市・愛知に対し、東京には金融やコンテンツ企業が揃っています。愛知と東京が繋がれば両者で一つの都市圏となり、相乗効果が生まれると思います。そうすると今までの地域づくりの考え方や産業構造が大きく変わるでしょう。2024年12月には愛知県と東京都とでイノベーション分野を中心に連携していくことを取り決めました。愛知のTechGALAや東京のSusHi Tech Tokyoなどのグローバルイベントにおける連携の他、様々な支援プログラムでも連携しています。現在STATION Aiでは1,000社を超える国内外のスタートアップ、パートナー企業として事業会社や銀行、VCなどの金融機関・支援機関、大学等が参画し、新規事業創出に取り組んでいます。

Q.井上 咲春/名古屋大学教育学部1年
STATION Ai設立以降、愛知県に何か変化はありましたか。

A.スタートアップもどんどん生まれているし、いろんな事業会社が新しい事業転換を果たしているなど、間違いなく大きな変化があると思います。また以前は大企業に就職することが愛知県では一種のステータスでもあったのですが、今はスタートアップに就職するとか、自分で起業するとか、多様な選択肢が生まれてきました。STATION Aiのオープンと同時に爆発的に増えたと思います。


Q.山田 朱莉/名古屋市立向陽高等学校2年
実際にスタートアップや事業会社間のアイデア共有などで生まれている成果にはどのようなものがありますか。

A.例えば、コメ兵が、スタートアップと連携して、中古品が本物かどうか瞬時に識別し、省力化を図るAIシステムの開発に取り組みました。

愛知と東京が一つの都市圏になると、経済学的に見ればイノベーションが起こります。ある意味、巨大な市場が生まれることになるからです。すると、それに対して先進サービスを提供する企業やサプライチェーンが集積します。愛知の産業には世界レベルのものがあり世界最先端の技術も集積し、それをバックアップするための研究機関が生まれ、莫大な投資も見込まれます。つまり産業クラスターが起こるわけです。一方、人的には多様なスキルや才能、価値観を持った人が集まることで、それをバックアップする教育機関が集積したりレベルアップに繋がり、そして投資や資金も集まるわけです。要は産業クラスターと知的クラスターが一緒になって動いていきます。社会学者のリチャード・フロリダ氏は、都市が集積することでイノベーションの流れが起きると分析しています。自然の法則としてもそうなりますが、我々はそれを意図的に転換して早く動かし、高度化させていきたいと考えています。

Aichi-Startup戦略の中で愛知県の強み、弱み、愛知県を取り巻く機会、脅威といった環境を分析・把握して独自のスタートアップ・エコシステムを作るような活動をしてきたのですが、その中で気付いたことは人材育成の重要性でした。どんな施策を組んでも実際に行うのは「人」ですから。認識、思考、ノウハウなどをきちんと捉えた人が展開しなければなりません。そのため、例えば名古屋大学ではアントレプレナーシップ教育の強化を図ることとし、全学部1年生全員にアントレプレナーシップ教育を必須授業として取り組んでいます。私も一教員としてこの教育に携わっております。

また、戦略の具体化に向けてスタートアップと事業会社を結合させるオープンイノベーション、スタートアップの成長支援、社会課題解決のビジネスに繋がる事業連携、事業承継の促進、海外連携事業を通じた地域の取り組みのグローバル化、というような支援活動をしています。そういった内容を学術的にも理解しやすいように、リーンスタートアップというモデルも展開しています。

STATION Aiでは、スタートアップ人材の裾野拡大のために、学生や社会人向けの起業家育成支援や、スタートアップでの就労人材の拡大に取り組んでいます。いろんなプログラムが並び、ここへ来ればきっと自分のやりたいことがどこかにヒットすると思います。

Q.戸田 和聞/名古屋大学教育学部3年
私はボランティア団体で活動しているのですが、そういったものはこの施設ではどのように位置づけられるのでしょうか。また、どのように関わっていけるのでしょうか。

A.まず、この施設の重要なポイントをお話ししましょう。ボランティアに限らず、何をするにも攻めの展開が不可欠ということです。ボランティアというのは手段であって、活動を通じて何をやりたいのかが大事なのです。ボランティアで何をやりたいかに尽きると思います。STATION Aiは、目的が明確になれば何でもできるように作られています。

STATION Aiには会員専用ゾーンと一般開放ゾーンがあり、各フロアはスロープで繋がっています。会員専用ゾーンにはオフィスエリア、ラウンジ、テックラボ等があり、一般開放ゾーンにはホテル、交流リビング、ルーフトップバー、カフェ・レストラン、イベントスペースの他、愛知の産業偉人について紹介している、あいち創業館があります。

会員用のオフィスエリアはコワーキングスペース、固定席、個室に分かれていて、ここにはコミュニティーマネージャーが常駐しています。スタートアップや事業会社の相談に乗ったり、専門人材に繋いでくれたり、という支援の仕組みが整っています。


Q.戸田 和聞/名古屋大学教育学部3年
STATION Aiはロボットフレンドリーな環境なのですか。

A.まずロボットというものをどう捉えるかですが、サイバーフィジカルシステムが新しいロボットの概念といえるでしょう。STATION Aiはリアルとバーチャルが融合したシステム設計で、オンラインとオフラインが融合するニューリアリティー対応型のイノベーション拠点にしようとしました。そこで参入してくれたのがソフトバンク株式会社です。オンラインとオフラインを利用すると瞬時に結果が返ってくる通信、自動運転における物理環境と業務プロセス、エレベーターやゲートなど設備連携、可視化管理など様々なシーンでロボットが活躍しています。ロボットフレンドリーな環境は最初から計画していたのです。


Q.井上 咲春/名古屋大学教育学部1年
一般の方が利用できるということがオープンイノベーション推進に何か影響を及ぼしているのでしょうか。

A.高校生や子どもたち、一般の皆さんに来てもらいたいと思っています。そのため、一般の方向けのスタートアップマルシェやプロダクトの展示会を開催しています。オープンイノベーション推進云々だけでなく、日常の中で何となくこういうところに慣れてもらいたいという思いからです。だからもっとフラットに立ち寄れる場所でありたいと思っているのです。また早いうちにイノベーションに慣れてもらうことも念頭にあり、高校生や大学生が利用してくれるのは嬉しいですね。いろんなイベントやプログラムにアンテナを張ってもらえたらな、と思います。
フランスのSTATION Fでは、イノベーションは偶然の出会いで生まれ、スタートアップとパートナー企業だけではなく、会員と一般利用者の、境を越える出会いがあると言っていました。

Q.山田 朱莉/名古屋市立向陽高等学校2年
一般的なビルとは違うスタートアップの拠点としての強みは何ですか。

A.既存の概念とは全く違うコンセプトの構成だということ。そしてスタートアップに必要なツールが全て揃っていることでしょう。

STATION Aiではいろんな形のスタートアップ形態がありますが、起業前や起業間もない方向けにビジネスプランコンテストなども開催しています。自分たちのビジネスモデルを競うものですが、実際に会社を起こしてなくても構いません。学生でも良いのですよ。入賞者には賞金も出ます。そして実際にスタートアップして軌道に乗せ、ファンドで資金調達する、ということもできますね。STATION Aiでは資金調達の支援もしています。

ちなみにディープテックスタートアップ支援もかなり積極的にしています。例えば、支援先の1つとしてHelical Fusionという核融合技術を用いて持続的かつ安定したエネルギーを生み出すスタートアップがあります。これが成功すれば今の社会環境が大きく変わり、日本は資源輸出国になるかもしれません。

海外連携事業も活発で、中でもINSEADの支援プログラムは人気です。世界屈指のMBAスクールの講義を受けることができます。
STATION Aiには、社会課題の解決と地域の活性化に資するイノベーション(ソーシャルイノベーション)の創出に向けた取組を行うA-IDEA事務局を設置し、ソーシャルイノベーションを創出する“革新的なビジネス”につながる案件の発掘から、社会実装までを一気通貫で支援する体制を構築しています。また、農業、デジタルヘルス、環境、モビリティ、スポーツの分野における産学官連携でのプロジェクトを愛知県として推進しています。


Q.羅星 梓/名古屋市立向陽高等学校2年
全国のオープンイノベーション拠点と比較して、特徴的なところは何ですか。

A.国内には残念ながら比較する拠点はありません。そもそも国内で愛知以外はパートナー企業が少ないので成り立ちにくいでしょう。ここは愛知ならではの拠点だと思います。

Q.原 菜々世/名古屋大学教育学部3年
イノベーション創出やスタートアップ普及に向けて、私たち大学生や高校生に期待されていることはありますか。

A.今のスタートアップが成長して大きくなっていく中で、次のスタートアップの卵が皆さんだろうと思っています。まだまだ情報が届いてないところがありますから知っていただくことが必要です。STATION Aiは中学生から高校生、大学生、社会人、全ての世代に対して起業支援プログラムを用意していますので、是非参加してほしいと思います。そして自分の将来の選択肢に起業も加えていただきたいです。

先にお話ししたアントレプレナーシップ教育の中では、リーンスタートアップ、エフェクチェ―ション、デザイン思考の重要性を訴求しています。コージェーションとエフェクチェーションを両軸で理解していかねばなりません。リーンスタートアップ、エフェクチェーション、デザイン思考―3つの共通点は不確実性とアジャイル開発を認め、試行錯誤を肯定し、セレンディピティを重視する点です。しかしそれだけでは不充分で、コージェーションがないと何をやっているのかぼやけてしまいます。アドミニストレーションとマネジメントをしっかりと分離して、総合的には産・官・学・金でやった方がいいと思います。様々なモデルを融合した形で、ノウハウの見える化を進めていますが、学生の皆さんに見てもらい、課題を設定し考える機会を創出することが大切です。思考の幅を広げる上で必要なのは、教育学でも経済学でも法学でもどういう分野でもいいですが、ベーシックになるものを持つことが重要です。そして環境変化に自分のノウハウそのものの研鑽を積んでいけば、大学の4年間は全く変わってくると思います。

あと大事なことは日本人の苦手なディベート力。主張に対して主張しても進展しません。主張の背景にある何故必要かという論拠(理由)とデータ(エビデンス)を示し、相手もそれ相応のものを示すことで議論が成立します。主張するためには、その背景となるものを把握していなければいけません。ディベート力というのは意志をちゃんと持って発想し目標を立て、思考することでしか身につかないのです。


Q.羅星 梓/名古屋市立向陽高等学校2年
STATION Aiで新規事業創出に取り組む人々の支援にあたって、現時点での課題は何ですか。

A.多様な人材をSTATION Aiに呼び込みたいと思っています。ダイバーシティは多様性という観点で、今後、県のプログラムやSTATION Aiの取組などで押し上げていかねばならないと感じています。また多様性だけではイノベーションは起きません。インクルージョン(包括)が必要なのです。ダイバーシティとインクルージョンを常に一体で動かしていこうと考えています。かなり力を入れていますが、まだ途上です。

激変する環境の中で教育機関や行政機関においては、非対称性の課題があると思っています。我々はいろんなところに情報発信をしていますが、まだ不充分。STATION Aiで何をしているかを知らない方が多いのが実情です。
また会員間で情報交換や連携等を自主的に促す仕組みとして自律的な会員コミュニティ「ギルド」があります。ここで偶然のきっかけが生まれ、コミュニティが形成されイノベーションが起きると考えます。
DXやAIの推進の中で、産業構造転換は重要です。AIをどう上手く活用できるかにかかっています。オンラインとオフラインが常に融合した新しい社会システムになることが我々が進めるコンセプトになっています。その時に学生の皆さんが何を学ぶべきかが大切だと考えています。アントレプレナーシップの「思考」と「行動様式」を身につけていくべきだと私は思っています。アントレプレナーシップ教育を大学が中心となって行い、卒業後はSTATION Aiが引き継ぐ、こうした地域が一体となったアントレプレナーシップ教育の全体構成にできれば良いのではないかと思っています。


《記事中の注釈》
VC/ベンチャーキャピタル、投資機関
アントレプレナーシップ/新しい価値や事業を創造し、主体的に行動を起こす起業家精神や行動力
リーンスタートアップ/最低限の機能を持つ試作品を短期間低コストで作り、顧客の反応を計測、学習して迅速に改善を繰り返すビジネス手法
ディープテック/科学的な発見に基づき地球環境の社会課題を解決する革新的な技術
エフェクチェーション/手持ちの資源、手段から新たな機会を創り出す意思決定の理論
コージェーション/明確な目標を設定し、そこから逆算して行動計画を立てる因果的意思決定プロセス
アジャイル開発/システムやソフトウェア開発において機能単位の小さな開発サイクルを繰り返し、リリースを重ねる手法
セレンディピティ/思いがけない偶然によって幸運や価値あるものを見つける能力
アドミニストレーション/組織の統治・運営・管理・経営


STATION Ai
名古屋市昭和区鶴舞1丁目2番32号
050-1724-4537
https://stationai.co.jp


ライティング:宮崎ゆかり
撮影:ミゾグチジュン

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